歯科医師として働き、学会活動に取り組む幸子を陰で支えてくれたのは、母親の藤であった。藤もまた弘教に情熱を燃やし、学会員のバイクの後ろに乗せてもらっては、あの地へ、この地へと友のために走った。
山本伸一は、高知文化会館の屋上での茶会で、幸子に言った。
「よく頑張ってきましたね。あなたのことを、地域の同志は誇りに思っていますよ。
あなたが頑張ってこられたのは、お母さんが守り、支えてくださっているからです。どうか、お母さんを大事にしてください。人間は、一人では生きていけません。常に誰かの力を借りているものなんです。そのことを忘れずに、周囲の人に感謝の思いをもって接していくのが、仏法者の生き方です。
同様に、会員の皆さんを激励する際にも、その方を応援し、協力してくれているご家族に、御礼、感謝の言葉をかけるんです」
それから、和服姿の藤に視線を向けた。
「おばあちゃん、ありがとう。着物がよくお似合いですよ。
ご一家でいちばん偉いのは、娘さんやお孫さんを守り、窪川の発展を支えてこられた、おばあちゃんです。まさに樫木家の会長です。うんと長生きしてください」
伸一は、樫木家の繁栄を祈りつつ、家族と一緒に記念のカメラに納まった。
人への感謝と配慮は、心の結合をもたらし、それが新しい前進の活力となっていく。(聖教新聞より転載させて頂きました)
「人は人によって生きていける、だから人を大切にして行く事が自分もその人も幸福になる近道なのだ」