ナラヤンは、すべての階層の人びとの向上をめざして運動を展開し、社会、経済、政治、文化、
思想等の総体革命(トータル・レボリューション)を主張してきた。山本伸一も、総体革命を
提唱・推進してきた者として、その革命の機軸はどこに定めるべきかを訴えた。
「私は、結局は一人ひとりの人間革命がその基本になり、そこから教育・文化など、各分野へ
の発展、変革へと広がっていくと思っています。いかなる社会にせよ、それをつくり上げてき
たのは人間です。つまり一切の根源となる人間の革命を機軸にしてこそ、総体革命もあるので
はないでしょうか」
「全く同感です!」と力強い声が響いた。
二人は、死刑制度の是非などについて論じ合い、多くの点で意見の一致をみた。
対談を終えた伸一は、夕刻、ガンジス川のほとりに立った。インド初訪問以来、十八年ぶりである。
対岸は遥か遠くかすみ、日没前の天空に、既に丸い月天子が白く輝いていた。空は刻一刻と闇に覆われ、
月は金色に変わり、川面に光の帯を広げていく。
伸一は、戸田城聖の生誕の日に、恩師が広布旅を夢見たインドの、ガンジス河畔に立っていることが不思
議な気がした。戸田と並んで月を仰いでいるように感じられた。また、広宣流布の険路をひたすら歩み続
けた一つの到達点に、今、立ったようにも思えるのだ。
戸田の後を継いで第三代会長に就任してからの十九年、さまざまな事態に遭遇してきた。いかにして難局
を乗り越え、新しい創価の大道を開くか、悩みに悩み、眠れぬ夜を過ごしたこともあった。疲労困憊し、
身を起こしていることさえ辛いこともあった。そんな時も、いつも戸田は彼の心にいた。そして、厳愛の
叱咤を響かせた。
“大難は怒濤のごとく押し寄せてくる。それが広宣流布の道だ。恐れるな。戸田の弟子ではないか! 地涌
の菩薩ではないか! おまえが広布の旗を掲げずして誰が掲げるのか! 立て! 師子ならば立て! 人間
勝利の歴史を、広布の大ドラマを創るのだ!”
源流 五十三を読んだ感想と決意 島幸弘
世界広布の旅は、人間革命の道でもある。どんなに理想が高くても現実的に個々人の人間革命がなければ総和としての総体革命は不可能であると思います。今こそ世界新時代青年拡大の年のテーマん如く、自らが青年の気概で自分自身が人間革命していける日々でありたい!